脆弱性情報

市立奈良病院サイバー攻撃とは?電子カルテ停止で救急・外来が休止した全経緯

この記事は約8分で読めます。
記事内に広告が含まれています。

2026年4月21日夜、市立奈良病院がサイバー攻撃を受け、電子カルテシステムが全面停止しました。救急受け入れの全面停止、外来診療の休診、手術の延期と、地域の中核病院としての機能が突然失われた今回の事案は、医療機関へのサイバー攻撃の深刻さを改めて社会に問いかけるものです。

本記事では市立奈良病院で発生したサイバー攻撃について何が起きたのか・現在の状況・今後の見通しをわかりやすくまとめます。


市立奈良病院サイバー攻撃の概要

市立奈良病院サイバー攻撃は、2026年4月21日(火)午後10時15分頃に発覚しました。病院が設置するネットワーク監視装置が「外部からの不審な通信」を検知し、院内のサーバーが次々と停止。電子カルテシステムが全件閲覧不能となりました。

病院と奈良市は「外部からのサイバー攻撃と思われる」と発表し、奈良県警に通報しました。警察は「院内システムが何らかのウイルスに感染した可能性がある」として捜査を開始しています。

事案の基本情報

今回の事案の基本情報は以下の通りです。

  • 発覚日時:2026年4月21日(火)午後10時15分頃
  • 発覚のきっかけ:院内ネットワーク監視装置が不審通信を検知
  • 被害の核心:電子カルテ・会計・臨床検査の3システムが停止
  • 病院の対応:ただちにサーバーをネットワークから切り離し
  • 被害報告先:奈良県警(サイバー犯罪として捜査中)
  • 患者個人情報の流出:現時点では確認されていない(調査継続中)

何が止まったのか?診療への影響を整理する

今回のサイバー攻撃で最も深刻だったのは、救急・外来という「入口」が丸ごと閉まったことです。市立奈良病院は地域がん診療連携拠点病院・災害拠点病院にも指定された地域の基幹病院であり、その機能停止は市民生活に直接影響します。

停止したシステム

電子カルテ、会計システム、臨床検査システムの3系統が直撃を受けました。患者の過去の診療記録・処方内容・検査結果などが参照できない状態になったため、通常の診療が不可能になりました。一方で、手術・麻酔管理システムはネットワークが分離されていたため直接被害は免れましたが、術後管理に電子カルテが必要なため、間接的な影響が生じています。

診療・救急への影響

停止したシステムと連動して、以下の対応が取られています。

  • 救急患者の受け入れを全面停止(4月23日時点も継続中)
  • 外来診療を原則休診(緊急性の高い継続受診は除く)
  • 4月22日予定の手術を一部延期(緊急性の高い手術は実施)
  • 入院患者は紙カルテでの対応を継続

奈良市の仲川げん市長はX(旧Twitter)で「紙カルテでの対応は1件あたりの労務負担が大きく、限界がある」と現場の苦境を明かしています。病院は受診予定の患者に対し、「受診の際には必ずお薬手帳を持参してください」と呼びかけており、普段から手元に置いておくことの重要性が改めて浮き彫りになりました。


攻撃の手口は?ランサムウェアとの関係

「市立奈良病院 サイバー攻撃 ランサムウェア」と検索している方も多いと思います。現時点では、病院・警察ともにランサムウェアとは断定していません。ただし、電子カルテが一斉に停止しバックアップは無事だったという被害の構図は、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)の典型的なプロファイルと一致しています。

ランサムウェアとは何か

ランサムウェアとは、感染したコンピューター内のファイルを暗号化し、復元の代わりに金銭を要求するウイルスです。病院のように電子カルテや患者情報を大量に持ち、「止まっては困る」施設が狙われやすいという特徴があります。

現時点で確認されていること・確認されていないことを整理すると、以下のようになります。

  • 確認済み:外部からの不審通信、電子カルテの停止、バックアップへの被害なし
  • 未確認:侵入経路の特定、ランサムウェアかどうかの断定、身代金要求の有無、攻撃者グループの特定、患者情報の流出有無

侵入経路については、警察と外部専門業者が解析を続けており、今後の続報を待つ必要があります。


なぜバックアップが「命綱」になるのか

今回の事案で注目すべき点の一つが、「バックアップサーバーへの被害が確認されていない」という情報です。報道によれば、病院は日次でデータのバックアップを取得しており、「最大でも1日分のデータを修復すれば済む」状況にあるとされています。

これがなぜ重要なのか、過去の事例と比べてみましょう。

2022年に発生した大阪急性期・総合医療センターのランサムウェア被害では、バックアップ側のシステムにも攻撃が及んだため、電子カルテの基幹部分だけで復旧に43日、全面復旧には73日を要しました。一方、2021年のつるぎ町立半田病院でも約2か月の完全復旧期間がかかっています。

バックアップが無事だった場合でも、安全性の確認やシステム再構築に数週間から数か月かかるのが現実です。市立奈良病院の全面復旧時期は現時点では未定であり、今後の状況次第で長期化する可能性があります。


なぜ病院はサイバー攻撃に狙われやすいのか

今回の事案を受けて、「なぜ病院が攻撃されるのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。実は医療機関は、サイバー犯罪者にとって「攻撃しやすく、効果が大きい」標的として世界的に狙われています。

ここではその理由を3つ紹介します。

理由1:「止まってはいけないシステム」という弱み

電子カルテが使えなくなると診療が止まり、最悪の場合は患者の命に関わります。攻撃者はこの弱みを逆手に取り、身代金を要求します。「払わなければ患者に被害が出る」というプレッシャーが病院側を追い詰めます。

理由2:古いシステムとセキュリティ予算の不足

病院の電子カルテや医療機器は、安全性のために更新が慎重になりがちで、古いソフトウェアが使い続けられることが少なくありません。また、中小規模の病院ではセキュリティ専門の人材や予算の確保が難しい現状があります。

理由3:大量の個人情報と高い希少性

医療記録には氏名・住所・病歴・保険情報などが詰まっており、闇市場での価値が一般的な個人情報より高いとされています。流出した情報を人質に二重脅迫(身代金+情報公開)を行う手口も増えており、医療機関への攻撃は「儲かる」という認識が犯罪者側に広まっています。

こうした背景から、2023年には医療法施行規則が改正され、病院管理者がサイバーセキュリティ対策を確保することが法的義務となりました。しかし義務化後も被害は続いており、制度の整備と現場での実装には依然として大きな差があるのが現状です。


過去の医療機関へのサイバー攻撃と今回の位置付け

市立奈良病院だけが特別なのではありません。近年、国内の医療機関へのサイバー攻撃は急増しており、今回はその最新事例に位置付けられます。

以下は、国内の主な医療機関サイバー攻撃の事例です。

病院名発生時期主な被害
つるぎ町立半田病院(徳島)2021年10月電子カルテ全停止・復旧2か月
大阪急性期・総合医療センター2022年10月電子カルテ全停止・復旧73日
岡山県精神科医療センター2024年5月電子カルテ停止・最大4万人分情報漏えい
日本医科大学武蔵小杉病院2026年2月一部システム感染・約1万人分情報漏えい
市立奈良病院2026年4月電子カルテ全停止・救急停止(調査中)

これらの事案に共通するのは「夜間に攻撃が展開される」「電子カルテが標的になる」「地域の基幹病院が狙われる」という点です。今回も発覚は午後10時15分と深夜帯でした。

医療機関へのランサムウェア攻撃の侵入経路として最も多いのは、VPN機器(外部からの遠隔接続に使う装置)の脆弱性を悪用したケースや、リモートデスクトップ(RDP)の不正利用です。警察庁の分析では、被害機器の約半数がセキュリティ更新プログラムを適用していなかったとされています。


受診予定の患者・市民はどう対応すればよいか

現在も救急・外来が停止している市立奈良病院を受診予定だった方、または今後の受診を検討している方へ向けて、対応のポイントをまとめます。

救急が必要な緊急時は、市立奈良病院に搬送されず周辺病院に振り分けられる場合があります。救急の場合は119番通報し、救急隊員の指示に従ってください。

受診・通院を予定していた方は、以下の点を確認してください。

  • 直接病院に電話して、診療再開状況を確認する
  • かかりつけ医(他のクリニック)への一時転医を検討する
  • 薬が必要な場合は、処方箋の控えとお薬手帳を用意しておく
  • お薬手帳は必ず持参するよう病院から呼びかけられている

今回の事案で特に重要な教訓として浮かび上がるのが、「お薬手帳の重要性」です。電子カルテが止まると、病院側は患者の処方情報を確認できなくなります。お薬手帳があれば、紙運用への切り替え時にも最低限の情報を医療者と共有できます。デジタルと紙、両方で管理しておくことを強くお勧めします。

加えて、「かかりつけ医を持つこと」の重要性も再認識されています。今回のように基幹病院が機能停止した場合、周辺の診療所・クリニックが代替の受け皿になります。日頃から地域のかかりつけ医と関係を築いておくことで、緊急時にも適切な医療につながりやすくなります。自分がどの医療機関に通院しているか、処方されている薬の名前と用量を把握しておくことも、いざというときの備えになります。


復旧はいつになる?今後の見通し

市立奈良病院の復旧時期は、2026年4月23日時点で未定です。復旧には一般に以下のプロセスが必要です。

まず、院内のシステム全体でウイルス(マルウェア)が完全に除去されているかを確認します。次に、安全なクリーンな環境を用意した上で電子カルテシステムを再構築します。その後、バックアップからデータを復元し、安全性の最終検証を経て段階的に業務を再開します。

バックアップが無事であったとしても、安全性の検証に時間がかかるため、全面復旧まで数週間から数か月かかることが一般的です。市立奈良病院は地域がん診療連携拠点病院・災害拠点病院という重要な役割を担っているため、奈良市・奈良県・厚生労働省との連携のもとで復旧が進められると見られます。

最新情報は、奈良市の公式ウェブサイトおよび市立奈良病院の公式発表をご確認ください。


まとめ:今回の事案から私たちが学べること

市立奈良病院サイバー攻撃の要点を整理します。

  • 2026年4月21日夜、外部からのサイバー攻撃により電子カルテが全面停止
  • 救急・外来が休止し、一部手術も延期という深刻な事態に
  • バックアップは無事との情報があるが、復旧時期は未定
  • 患者個人情報の流出は現時点で確認されていない(調査継続中)
  • 侵入経路・攻撃者・身代金要求の有無はいずれも未特定

医療機関へのサイバー攻撃は今や「他人事」ではありません。電子カルテが止まれば救急も止まります。市民・患者の立場でできる備えとして、日頃からお薬手帳を管理しておくこと、かかりつけ医を複数持つこと、そして緊急時の連絡先を確認しておくことが、今回の事案が示す最大の教訓です。


【情報の正確性について】

本記事は2026年4月23日時点の報道情報に基づいています。事案は現在も進行中であり、病院・奈良市・警察による続報で情報が更新される可能性があります。最新情報は公式発表をご確認ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました